沼田の囲炉裏


温泉に浸かりたくなり、沼田の「しゃくなげ温泉」へ。大間々から赤城の東北面を回り込むこのルートは、四万十式作業道の取材で何回となく通ったので懐かしい。

公共施設ながら掛け流しというこの温泉は貴重だ。草津のような強烈さはないけれど、透明ながらほんのり硫黄の香りがしてなかなかいい。温泉大国群馬、さすがなのである。

入浴後、道路を挟んで反対側にある「沼田市指定重要文化財・旧鈴木家住宅」を見に行った。茅葺きの再建にはすごい手間がかかったことであろう。

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蔵に積まれた薪。囲炉裏が燃えているのかな? と期待も高まる。

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ところが母屋中央の囲炉裏は・・・

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火はなくてネコの糞のような冷たい炭が転がっているだけ。おそらくほとんど使われていない。移築再建したんだけれど、最も重要な心臓部である囲炉裏は、まがい物のフローリングの上に造られている。しかも火が灯っていない。

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土間に隣接したもうひとつの囲炉裏。こちらはちょっと燃した跡がある。しかし今は冷たい。

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がっかりしながらも、気を取り直して蔵に入ると、様々な桶や樽があって嬉しくなった。

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板目で木を組み合わせるのが樽。

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柾目で木を組み合わせせるのが桶。

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樽はつねに液体や半液体を入れておくものだから、板目を使う。木目の中の色の濃い硬い部分が水漏れを遮断してくれるからだ。

桶は水を入れたり出したりするもの。また、おひつなども使うときは濡れているが使わないときは乾いている。だから柾目が適する。柾目は湿乾の変化でも狂いにくく、水分を放出しやすい。

今の大工さんは、新建材の家でプラスティックの漬け物樽でできた漬け物を食べながら、オール電化の家に暮らしているのかな? ちょっと悲しい沼田の囲炉裏であった。


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