ミツバチのゆくへ/集落支援員in持倉(13)


6月、2回目の集落支援員活動。持倉へ。KIさん宅へ。ここは持倉の中で1軒だけ道から下方へ歩いて行かねばならないお宅で、傾斜畑の中を縫うように下っていく。

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空のハチ洞がある。近くにペットボトルを利用したスズメバチ・トラップが下がっている。中は100%のブドウジュース、もしくは焼酎・酢・砂糖を混ぜたものを使うという。

家につくとオオミスジという比較的珍しい蝶が滑空していた。屋根に止まったそれを撮影しようとしていると、お勝手口から奥様が現れる。

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「今日はいますよ。いまジャガイモの消毒に行っているから、じき戻るでしょう。お茶をどうぞ」

と家に通される。KIさんはK建設で重機の運転をしていて、日曜日以外はなかなか捕まらない。休日でも春先はなにかと家回りで忙しそうなので遠慮していたのだ。今日はトレランのイベント以来のお話になる。

まずはハチ(ニホンミツバチ)の話から。

今年は春の2~3月に元巣のハチがだいぶいなくなった。元巣とは、自然に巣を作っているハチの巣のこと。大きな木の祠(ほこら)に作ることが普通だが、大木のない今では、昔のずさんな工事でできた擁壁の隙間や、墓石の隙間などの内部に巣をつくることが多いという。その元巣の近くに空のハチ洞(丸太をくりぬいて自作したもの)を置いておく。

すると、分封(越冬した女王バチ集団が、新女王バチに巣を譲って働きバチの一部とともに他に移り、新しい巣を作ること)のとき、何匹かの偵察隊がハチ洞を取り囲んで、新たな巣づくりに具合がいいか、調べに来るという。

場所は見通しのいい朝日が当たって日中は日陰になるようなところが理想的だそうだ。そして女王蜂のコロニーがまんまと自作のハチ洞に入ったなら、一夏蜜を集めさせ、越冬のときに蜜を収穫するのである。

ハチ洞の位置は古巣からあまり近すぎてもダメで、100~200mくらい離す。おたがいの縄張りとしてそのほうが安心するのではないかとのこと。

さて、元巣のハチがいなくなったというのは、越冬するだけの蜜が巣内にあるのに、働きバチが巣に戻らなくなってしまった状態なのだ。近年、世界的に起きているハチの大量死である。KIさんも仕事に降りたときに仲間といろいろ話すのか、ダニ説や携帯電話の電磁波説などをご存知であった。

いま、このハチの大量死でいちばん原因を疑われているのは、新農薬のネオニコチノイド成分なのであるが、これらの入った殺虫剤・除草剤は量販店で一般に売られており、日本や中国は使用基準が大変に甘く、かなりの量が農業的に使われている。また、田舎や山村は過疎で草刈りに手がまわらず、殺虫剤・除草剤を大量に使う傾向にある。

しかし、過疎地の人たちに殺虫剤・除草剤を使うな、とも言えない。

「イチゴ農家なんかは、ハチの受粉は難しくなって、困っているらしいね」とKIさんは言った。

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73歳。山村のすべてを知っている最後の語り部。

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帰り際、かなり上のほうで草刈りをしているHIさんが見えた。手を振ってみたが分からないようであった。

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※今回はなんだかモノクロ写真にしてみたかったのでした。


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