梅田のこの借家に昨年6月に越して来て2回目の夏を迎えている。昨年は囲炉裏がまだできておらず、引っ越し荷物の整理もつかず、庭の手入れもままならず、夏の暮らし方など考える暇もなく過ぎていった。
今年はじっくりとこの日本家屋の夏を味わっている。今日は道路側(南東向き)にすだれを吊ってみた。これがなかなか良くてちょっと驚いた。網戸をしていると風が遮断されがちだが、網戸を開けてすだれをしたら、前より風が通るようになった。それに廊下に差し込む日差しに陰ができて、照り返しや蓄熱がなくなったぶん涼しさが増した。
同時に夏囲炉裏の煙もよく抜けるようになり。調理時の熱さも和らいだ感じがする。夏は囲炉裏部屋と和室との境界になるガラス戸を開けておく。多少和室に煙が流れることがあるが、すだれの風効果で煙がこもることはないし、蚊取り線香を焚いていると思えばいい。
まったく、日本の昔の暮らしアイテムというのはよく考えられている。この家は8畳・6畳和室の連続した長手方向が掃き出し窓なので、風がよく通る。ただし軒があまり深くないので、夕刻は反対側の窓から西日が若干入ってくる。こちらにもすだれをつけてみようと思う。
なにしろこのすだれ(商品名は「よしず』だが)、6尺×6尺サイズでなんと560円なのだ。東南アジアのどこかで作られているのか、申し訳ないほどの値段である。
この家は両側にわずかな庭と垣根があるのだが、だいぶ放置された垣根も枯れたりすき間が空いた。前は窓にレースのカーテンが吊ってあったのだが、それはこの家に似合わないので外してしまった。だから外から家の中がよく見えてしまう。すだれは外部からの視線はほぼ完全遮断だが、室内から外の気配はわかる。そして葦の微妙なズレが光のひだと陰をさざ波のように生み出して、見た目も美しい。
*
この梅田では何年か前に新築ブームがあったようで、周囲には新建材の立派な家が目立つ。しかし細い柱材と構造用合板で保たせる家なので大きな開口部はたくさんとれない。だから夏はクーラー使用が前提の建物になっている。そして箒で庭にゴミを掃くという掃除方法から、必然的に電気掃除機に変わっていった。
細い柱材と構造用合板を使うのはそれが一番安く簡単に作れるからで、それだと開放的な家が作れないことを住宅メーカーは隠しつつ、耐震の良さや冬の断熱効果ばかり歌い上げる。もちろん、家電メーカーや電力会社もそのような暮らし方は大歓迎なのだ。
エンジンを回したり電気でモーターを回したりすることで冷気を作っている。ということは、外部にその反作用として熱気を放出しているということだ。都会ではほとんどそのような暮らし方になってしまったので、窓を開けると隣家の排気が流れてくることにもなりかねない。その排気の中にはシックハウスの原因になる化学物質も含まれている。新建材の家では、この換気を常に行なっていないと夏はとくに危険なのだから。
カンカン照りで蓄熱されたアスファルトの上を、熱気をはらんだ車が、排気ガスを吐きながら次々と通り過ぎていく。CO2による温暖化説はウソっぽいが、ヒートアイランド現象による温暖化は加速されていると思う。しかし、後者についてマスコミは沈黙する。家電や車が売れなくなると困るから(笑)。
遮断し、引きこもり、お互いに憎しみ合うような家。外に飛ぶトンボやツバメたちが迷惑するような家。いつからこんな家になってしまったのだろうか? もしフリーエネルギーの技術ができて電気代がタダ同然になったとしても、私たちは決して幸福になれないと思う。よりいっそう電気製品に囲まれる暮らしになるだけだ。
蝉の声が聞こえる。自然の風は優しく、本当に気持ちのいいものだ。ちなみに私は扇風機も嫌いなので、団扇をたくさん持っている。
*
太陽が南に回った午後、旧アトリエではあまり出番がなかった籐椅子で昼寝(めちゃ気持ち良いですココ)。デッドスペースだった廊下がすだれで新たな有用空間に。