喪中ハガキのリアクションがメール・電話・手紙と、様々な形で全国から返ってきて、ありがたいと同時に、思い出がよみがえってメランコリーな気分にもなる。図書館に行ったらケヤキ並木の落ち葉が舞っているのをみて、なんだかその気分がさらに増幅されてしまった。
この落ち葉の光景に、ふと魚河岸でバイトしていたときのことを思い出した。東京でイラストの仕事がまだ軌道に乗らなかった頃、年末になると築地市場でよく働いていたのである。築地は年中人手不足で募集をかけているが、たいがいどこの店でも、年末のバイトを皆勤するとボーナスがもらえる。
早朝の電車でアパートを出、地下鉄に乗り換えて築地本願寺のところで階段を駆け上ると、びしょぬれの歩道に鮮やかな落ち葉が張り付いている。それを見て「ああ、奇麗だな・・・」と足を止めた。すぐ目の前に過酷な労働が待っているというのに、この美しさに見とれてる私がいる。そんな私は、いやそんな私だからこそ、アーティストとして絶対に成功するのだ・・・と心の中でつぶやいていた。