朝、西日本放送ラジオRNCから「今朝の新聞記事を見た。ラジオで紹介したい。電話インタビューもお願いしたい」と電話が入り、あわててコンビニへ新聞を買いにいく。
新聞をひらいてみると、「『囲炉裏の家』街中でも実践」という見出しで、囲炉裏暖炉のカラー写真がどでかく載っているのだった。
番組は「さわやかラジオ 気分上々」という朝ワイドで、パーソナリティは亀谷哲也さんと磯部路恵さん。新聞記事に反応したお二人が、私に質問形式で対話するという形で、生放送の電話インタビューが始まった。
■囲炉裏暖炉のある家で生活されているということなんですが、どうなんですか? 囲炉裏のある家って? ひとことで。
囲炉裏って結構持ってる方いらっしゃるんですけど、普通は「炭」を使うんですよ。ようするに炎と煙が上がらないように。
■そうですよね。
そうやって趣味的に使う方が多いんですが、私のやつは本当に炎を立てて、暮らすやり方なんです。
■炎を立てるということは、木をくべるということですか?
はい。
■それっておうちの中で?
おうちのなかで。暖炉の排煙装置、煙突とフードそれを組み合わせて、煙がうまく外に抜けるように設計してあります。
■暖炉だったら見たことあります。こう、囲まれてるんですもんね、暖炉っていうのは。囲炉裏ということは、囲いとかはないんですか?
囲いはないです。背面だけ、石の板が立っているんです。
■大内さんのご自宅の囲炉裏の写真があるんですが、日本の伝統的な囲炉裏はきってありますよね? そこの一部の面が壁で作ってあって、炭ではなくて薪をくべている感じで西洋の暖炉と日本の囲炉裏の融合したようなイメージですね。
そうですね。ドッキングした感じです。
■素敵ですね。その横であぐらをかいて座って、暮らしを楽しんでらっしゃる感じがしていいものですね。ゆとりを感じますけども、囲炉裏暖炉っていうこういうものを作って、暮らしていこうって思われたのはどういったところがあったのでしょう。
もともと山暮らしを何年もやってまして、その時はほんとにハードな囲炉裏を使ってたんですね。山の水を飲みながら。
■おぉ、ワイルドですね。
こちらに引っ越すきっかけがあって、新しい木の家を造って囲炉裏を作りたかったんですが、私はイラストの仕事もコンピュータなんかを使ってするのでやっぱり煙とか灰が飛ぶとどうしてもだめなんです。
■灰がね
リビングで囲炉裏を組むのにどうしたらいいかってことで最初は暖炉を考えたんです。ところが、暖炉も消防法なんかにいろいろ引っかかるところがあるんです、新築で作ると。それで、囲炉裏とドッキングして組み合わせると、その法令も通るし都合もいいということでこれが生まれちゃったんです。囲炉裏暖炉というものが。
■それじゃあ、オリジナルで考えたんですね。
そうです。
■大内さんっておうちも国産の木で作られてるってお聞きしたんですけれども。どうですか? 国産の木で作った家に住んで、木をくべる暖炉のある暮らしっていうのは。憧れですけど、なんか手が届かないのかななんて思うんですが。
いや、そんなことないですよ。国産の木もだいぶ安くなってますし、今でも日本の大工さんって優秀なんですよ。工務店もやっぱり木の知識は伝統的に持ってますから。だから、施主の人が提案していけば決してできない家じゃないんです。そんなにお金もかからないし。
■森林の再生とかも考えられての、今のこの生活なんですよね。
ええ。もともと私は森林ボランティアで山に入って荒廃しているスギヒノキの再生などの活動をずっとしてきました。それの流れなんです。林業の最終的な形っていうのは木の家だと私は思っているので。
■なるほど。地元でとれた木をもっと生かしていきたいっていうのは西日本放送ラジオでも特番でお伝えしたことがありますし、やっぱり間伐っていうのが、森を豊かにたもつためには必要で
どんな木をうまく、こういった囲炉裏だったりとか活用できたらとても有効活用ができるということにつながりますよね。そうですね。
■たくさん木はあるんですもんね。そんな大内さんなんですけども、このおうちを造った過程をまとめた本を出版されているんですね。
はい。
■どんな本なんですか?
『囲炉裏暖炉のある家づくり』という、ずばりそういうタイトルです。
■それを見ると、この暮らしがどんなものかっていうことがわかるということですし、実はおうちを一般公開しているということなんですよね。
そうなんです。明日までなんですけど。
■おうちの中をみせていただけるんですね。
火も実際に焚きます。
■火も焚いて見せてもらえる。なかなか、見る機会がないと思いますので興味があるという方は、ぜひこの機会に。
■こういった囲炉裏暖炉や木が暮らしの中にあると
どこがいいなって感じられますか?やっぱり団らんなんかを火で取り戻す、っていうのはすごくいいことだと思うんです。囲炉裏暖炉がある場所っていうのは家の中の一番いい場所にあるじゃないですか。今、それがテレビになっちゃってるんですよね、多くの家では。
■そうです
私は、囲炉裏暖炉の反対側にちいさいテレビを置いているだけで
どちらかというと、こっちの囲炉裏が中心の暮らしなんです。■火をみると、心が落ち着くということも聞いたことありますし
今はなかなか本物の火を見たことがない子供も多いですけれども
こういったところで、本当に人間の基本の暮らしみたいなものも
ひとつ目にして、学べる。それから、薪ストーブと違って囲炉裏は山で拾ってきた小さい乾いた薪で十分活用できるんです。自分で木を倒して乾かしてって大変ですけど、囲炉裏の場合は荒廃している裏山に行って、乾いた薪をいくらでもとれるんですよね。それを集めてきて、燃料にして楽しむこともできるのですごいリーズナブルでもあるんです。
■そうなんですね、意外です。囲炉裏のこと知らないですね。すてきな、こういった新しい取り組みかなという気もします。興味のある方は大内さんのところまで、ご連絡をお願いします。
事前に「最後に大内さんが最も伝えたいことをご用意しておいてください」と言われたのだが、森林再生や火による団らんなどは、お二人がすでに語ってくれたので、私は「囲炉裏は薪ストーブとちがって細い枯れ枝などの燃料として使えるのでリーズナブル」というようなことを話した。
ちょっと驚いたのは森林再生の話に及んで西日本放送のお二人から「間伐」などという言葉が出てきたことである。
実は2003年の5月に岡山県の津山市で個展をやったときも、やはり地元のラジオRSK(山陽放送)の番組でインタビュー出演したことがあるのだが(このときは個展会場にやってきた女性アナウンサーと質問形式のトークだった)、当時はまだ「間伐」という言葉が一般には浸透しておらず、「干ばつ」と間違えられないだろうか? などと後で心配したものだった。
さっそくラジオを聞いたという人が来訪され、次いで遠方からの予約のお客様が来る。
今日はyuiさんが県の森林関係の交付金説明会に、私の代わりに出掛けており、他にもお客さんが入れ替わり現れて忙しかった。
有料1000円という高いハードルを掲げたにもかかわらず来てくれる人は、やはりかなり個性的で濃い人が多く(褒め言葉ですw)、今日のお客様方をyuiさんに合わせることができなかったのは、ちょっと残念であった。
気温は暖かかったが、お客様のためにときおり窓を開けながら終了時間まで囲炉裏暖炉に薪をくべ続けた。それでも枯れた小枝などをちょぼちょぼ燃やすだけなので、薪が減ったという感じがしない。
また、このような燃やし方だと床への灰飛びもほとんどない。さらに、煙突からの排気の近所への心配も最小で済むであろう。囲炉裏暖炉に「街中(まちなか)で」という言葉を付けれるゆえんである。
もう一つ、実際に見てもらって初めて解る方も多いのだが、この小さな裸火は、薪ストーブよりはるかに安全なものである。
囲炉裏機能としての灰と炉縁がついているというところも安全の大きなポイントで、このために2階の床板に置いても安心感があり、暖炉のように使用後の灰掃除をする必要がなく、しかも爆ぜた燠炭はほとんど炉縁内に落ちるので、ファイヤースクリーンの必要を感じないのである。
「2階にこれを置くという発想が凄い」
と言ったお客様がおられたが、2階に置く利点はかなりある。
著書にも書いたが、火気の内装制限がゆるいので暖炉の周囲を防火材にしなくてもいいという点、もう一つは「煙突が短くてすむ」ということで、暖炉の煙突は特注にならざるを得ないので、この2つだけでもかなり経費節減できるのだ。
さあ、残り一日。この日は大切な記念日でもあります。