メバルの塩焼き


瀬戸内の海は波がない。が、潮流は激しく変わる。干満の差によって生まれる流れが、肉眼でもわかるほどだ。直線的な波止場の水面さえ、ちりめん状にさざめき、ちいさな渦を見ることさえある。

もちろん干満のピーク前後には潮が止まり、風がなければ水面は鏡のようになり、森が落ち込んだ自然海岸線でそれを眺めていると、ここが海ではなくどこか高原の湖であるかのように思われ、不思議な気分になる。

yuiさんは高松で育ったのに釣りはまったく経験がなかったのだが、以前から「釣りしたい!」と私にはげしく申請しており(笑)、私は私で、長く止めていた釣りを群馬の桐生では再開するつもりが、めまぐるしい忙しさに追われてそれを果たせないでいた。

高松に引っ越し、新居ができたら「釣り始めよう!」と約束していたし、私の内部にも釣りしたいという欲求が再燃していのだが、そこに絶妙のタイミングで師匠が現れ、私たちは手ほどきを受けながら海の小物釣りから始めることになったのだ。

さて、ジグヘッドをつけたワームを海面に投げ、ゆっくりリールを回して引き寄せながら水面を眺めていると、期待と不安と絶望がめまぐるしく点滅しながら、ふっと「無心」になる瞬間がある。「忘我」といってもいい。

そこに小魚の群れが流れてきて、銀鱗を閃かせる。yuiさんは「わーこんなの初めて見た~」と目をキラキラさせて感動しまくっている。たしかにその光景は神秘的で、忘我の境地でそれを見ていると、自分の分身が小魚になったような、海と一体になったような気分になれるのだった。

0528.9

今夜も同じポイントへ。

0528.1

満潮は毎日1時間くらいずつズレていく。このポイントはその満潮からの引き際がいいようだ。今日は私が2匹。yuiさんはアタリが2回あったのだがバラしてしまった。最初の頃は根掛かりと魚の引きの区別がつかない風だったが、それが明快に解るようになってきたようだ。

0528.2

2匹で家に戻った。昨日釣った残りは下処理してチルドしておいたので、それと一緒に塩焼きすることに。左上の魚はカサゴ(ガシラ)であとはメバルだ。

0528.3

塩をふってガスグリルで焼いてみた。

0528.4

小さいけれど、身はふくよかだ。煮付けは海藻臭が残るが、焼きは香ばしく消える。

0528.5

あぶらはないが淡白ながら深い味がする。渓流のヤマメ・イワナの味にも似ている。醤油をかけるとまた旨味が広がる。

0528.6

それにしても、アジやメバルを釣るルアーのジグヘッドとそれにつけるワームのバリエーションが、ここまで細分化され発達しているのには驚いた。

0528.7

これからアイナメの稚魚をメバルが追うときがあるそうで、緑のワームがそのイミテーションである。全長は3~4cmほどしかない。それに付けるジグヘッドは1.5g程度のもので、それを0.4号の糸で投げるという繊細さだ。

0528.8

海のルアー釣りはとことん研究され、「アジング」「メバリング」という言葉まで生まれており、釣り雑誌も出、ネットを検索すればそのノウハウ解説も多数ヒットする。

日本のルアー・フライの黎明期を青春時代に過ごした私には信じられない展開で、まるで浦島太郎状態(笑)だが、いつの時代も現場体験がいちばん大切なのは言うまでもない。

ガンバレyuiさん♫


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください