3分づきを食べ始めてからというもの、お通じは快調で、若き日に玄米菜食を実線していたときのことを思い出したほどであった。が、ある朝いつもと様子が変で、おなかがくぐもって量も出ない。食事はいつもどおりのはずなのに、なぜだろう?
普通、私の場合は肉を食べたたとき、それとセットで白米を多食したときに便が少なくなることが多いのだが、肉はしばらく食べていないはずだった。
考えてみたら思い当たるふしがあった。前日、ペットボトルのミネラルウォーターを貰ったので飲んだのだが、それは新製品で果物のフレイバーが入っており、ちょっと甘い味がしたので全部飲まずに少し残した。
ネットで調べてみると、その製品は意外にも角砂糖にして約6個分の砂糖が使われているという(もちろん添加物も)。パッケージはミネラルウォーター風だし、甘みも薄かったにもかかわらず、である。
南清貴『究極の食 身体を傷つけない食べ方』という本に、砂糖は身体に入ると腸内で悪玉菌の餌になる、つまり腸内細菌が乱されて便秘を招く・・・と書かれているのを思い出した。
ウエイトロスをしようと思うならば、これだけは外せないということがあります。それは、白い砂糖を食べないことです。もちろんウエイトロスを目的としていない人でも白砂糖を摂るのは有害ですが、ウエイトロスをするならなおさらです。白砂糖の成分は蔗糖(しょとう)と呼ばれ、ブドウ糖と果糖が結びついたものです。
ご承知のように、ブドウ糖はエネルギー源ですからとても大切な栄養素です。果糖は果糖で体内で効率的に働いてくれるエネルギー源のひとつで、代謝の際にほとんどインスリンを必要としないため、膵臓への負担が少なくてすむことが利点です。しかし、ブドウ糖と果糖が結びついた蔗糖は、身体にとっては困りもの。カロリー以外にまったく栄養素を含まないため、空のカロリー(empty calorie)と呼ばれ、必須栄養素(とくにミネラル・微量栄養素)を大量に消費してしまいます。
しかも、悪玉菌と言われている細菌とかウィルスのようなものの餌になってしまうので、細菌やウィルスを身体の中で培養するのです。有用菌の餌にはならず、小腸でも大腸でも悪玉菌の餌になってしまう。結果的に、大腸の中で腐敗を起こしてガスが溜まったり、便秘を起こしたり、胃の中ではピロリ菌の餌にもなります。ピロリ菌というのは、胃潰瘍の原因とか、ひいては胃がんを引き起こす元凶と疑われている菌です。「砂糖は脳のエネルギー」とよく言われますが、脳の栄養源であるブドウ糖はごはんなどの複合炭水化物から摂ればよい。(南清貴『究極の食 身体を傷つけない食べ方』)
また蔗糖は分子が小さいので血液に吸収されやすく、血管の中でもバイ菌やウィルスを育ててしまうという。
以前のお通じに戻るのに3日ほどかかっただろうか。毎度3分づきを食べているわけではなくて、ときにはパンやパスタ、素麺など精白小麦も入るのだが、イチジクなどの果物や、野菜・豆類から食物繊維は摂っているので戻りも早かった。
血糖値を急上昇・旧降下させる食品
蔗糖はまた血糖値を急激に上げ、身体はそれに対応して膵臓から多量のインスリンを作り出す。結果的に血糖値を異常なまでに下げてしまうので、低血糖の原因になる。何を食べても血糖値は上がるのだが、とくに急激に上げてしまうのが、砂糖、白いパン、白米、ペットボトルのドリンク類、スナック菓子、ファーストフード、インスタント食品などで、このような精製度の高い食品を摂ると、糖が急激に体内に吸収されてしまう。
血糖値が急激に上がるというのは、血中にだぶついた糖が酸化して、身体が腐った状態になる可能性もあるので危機的な状況なのだ。ところが、人間の身体は常に飢餓モードにセットされていて、人類誕生以来こんなに豊かな食生活は経験がない。だから血糖値を下げる機能というのが備わっておらず、唯一あるのが膵臓からインスリンというホルモンを血中に出す方法なのである。しかしこれは応急処置的なシステムなので、適量が分からず、膵臓が猛烈なスピードで大量にインスリンを出してしまう。すると効き過ぎて、ぐっと上がった血糖値が、急激に落ちてしまう。
血糖値が下がると、それはそれで危機的な状況なので、また何かを食べなくてはならなくなる。でも食べたばかりでまた食べるわけにはいかないので、イライラしてくる。低血糖が下がり過ぎると、アドレナリンなどのホルモンを大量に出してきて、怒りっぽくなったり鬱になったりする。現代の子供たちの低血糖症の問題もここに原因があるという。
抗生物質も腸内細菌を破壊するといわれているが、子供たちに安易に砂糖の入ったドリンクや菓子類を与えることが、また料理を砂糖甘の味付けにすることがいかに良くないことか・・・。小学生に糖尿病予備軍が14%もいるという香川のお母さんたちは、この砂糖や加工食品の害を肝に命じるべきだろう。
糖尿病の要因と予防・改善のために
さて、糖尿病の要因を、南清貴『究極の食』からもう一度おさらいしておこう。
1)食物繊維の不足
2)飽和脂肪の摂取量の多さ
3)トランス型脂肪酸の摂取量の多さ
1)は白米や精白したパンを食べていることを意味しており、2)は肉類と乳製品を多く食べていることを意味している。
中でも3)が最重要で、南氏は「トランス型脂肪酸を摂取する限り、健康のために他にどんな努力をしても無駄です」とまで書いている。うどん好きの香川県人はまた、洋菓子やパン類も大好きで、洋菓子店はいつも賑わっているし、スーパー内にかならず存在するベーカリーも繁盛しているのを見る。うどん店の揚げ物や、ショートケーキやパンの中には、トランス型脂肪酸が大量に含まれているのである。
また、カフェを観察すると、多くの人がスティック砂糖やガムシロップ、そしてコーヒーフレッシュを何の迷いもなく使っている。砂糖は言わずもがな、コーヒーフレッシュは本物のミルクではなく、実は安価な植物性油脂を界面活性剤で乳化させ、色をつけてpH調整剤で保存力を上げたものなのだ。
さらに付け加えておくと、安でのショートケーキなどに使われてるクリームは、実は乳製品ではなく、主な原料はパームオイルで、それを泡立たせる薬品、乳化剤などを加えて、さらに香料と白い着色料でできている。つまりコーヒーフレッシュとほぼ同じなのだ(怖)。
だから、糖尿病の予防と改善には、
1)精製しない穀類に含まれる食物繊維を大いに摂ること
2)飽和脂肪酸を含む肉類を食べ過ぎないこと
3)トランス型脂肪酸を摂らないこと
この3つの食生活を取り戻すことが大切なのだ。食物繊維についてとくに「穀類」にこだわるのは、肥満や糖尿病改善に重要な微量元素「クロム」が多く含まれているからだ(クロムが不足すると糖をうまくエネルギー化できない)。
クロムを摂り込むには、穀物を精製しないで食べるのが一番てっとり早い。玄米にはもちろん、私が推奨している三分搗きの米にも欠落せずに含まれています。白米、胚芽米、七分搗きぐらいになるとかなり落ちて、ほとんど糠(ぬか)のほうに含まれてしまいます。(同書)
未精製穀類と豆の組み合わせが鍵
穀類とクロムの関係については、丸元淑生も『たたかわないダイエット』『短命の食事 長命の食事』等で力説するところだ。が、注意したいのは農薬や重金属などの汚染物質は糠(ぬか)部に蓄えられるので、そんな米は精製しなければ危なくて食べれないということだ。だから玄米や3分づきを食べるなら「無農薬有機栽培米で」という条件つきである。また、糠部分は油分があるので精米したときから酸化が始まる。だから小型精米機でそのつど3分づきにするのが理想である。
いま、性能のよい小型精米機を1万円台で買うことができ、都市部には自然食品店がたいていあるので、そこで無農薬有機栽培米を入手することができる。ネットで探してもいいだろう。私は今年の1月に小型精米機を購入し、6月下旬から無農薬の3分づき米を食べ始めたが、これまで3分づきをで挫折を繰り返していた頃の米に比べ、格段に美味しい。
3分づき米と豆類で基盤を固めておくと、食の組み立てがぐっと楽になり、野菜中心のバランスのよい副菜を自然に求めるようになる。2)の肉類を食べ過ぎないためには、未精製の穀類と豆、そして魚を増やすのが鍵になるのだ。
とくに穀類2:豆類1というのが黄金の組み合わせで、これで9つの必須アミノ酸が全部摂れてしまう。肉類は必須アミノ酸が網羅されているのでよい食品と言われているが、動物の肉はそのまま人の肉になるわけではなく、一度アミノ酸のレベルにまで分解しなければならず、最終的には肝臓と腎臓に大きな負担がかかる(そして現代の畜産事情における肉の内容や、飼料確保のための破壊的農業も問題である)。
精製していない穀類、豆類の組み合わせは他の必須栄養素も豊富なだけでなく、食物繊維が豊富なので食べ過ぎることができない。適量まで食べたらすぐに満足感と満腹感がやってくる。白米で肉を食べるといくらでもおかわりできる感じがする。そして食べ過ぎた後は疲れてぐったりしてくる。
さらに先にも書いた「血糖値の安定」も重要で、食事が最低限満たしていなければならない条件のひとつである。伝統的な食事はそれを守っていたのだが、加工食品が氾濫している現代では、分析的に食事を組み立てていかねばならない。そして血糖値を上げない食品の筆頭が「豆類」なのだ。その意味でも未精製の穀類と豆の組み合わせを基盤に置くことは最も有効な方法なのである。
砂糖甘大好きの香川県人のみならず、日本の今の食生活は大量の糖にあふれていて、おそらくこれほどの糖を摂っている民族は人類史上でも類を見ないのではないか・・・と南氏は書いている。私は買い物に行くと、レジで並んでいるとき前の人のカゴの中をよく観察するのだが、確かに皆が砂糖甘の食品、加工食品を大量に買い込んでいる。
劣悪な環境に防御する食
同じく南氏の『食のモノサシを変える生き方』に以下のようなことが書かれていて、現代日本の医学と栄養学との乖離にあらためて愕然とするのである。
アメリカではドクターになるのに栄養学は必須で、栄養士の地位がとても高い。日本の医師たちは大学で栄養学を学んでいないし、栄養士は医師の下でできる範囲しかやらない。しかも経営の考えが入るので、病院食においては「いかに安くカロリーを整えるか」と計算する。
病院関係の従業員に健康と食事についいてヒヤリングすると、皆じつはよく知っているのだが、そこを動かすギアが入らない。ただし、今の食事のありかたそのものが身体にすごく負担をかけるものだ、という肝腎の情報は伝わっていない。
ということは、食事と栄養と病気の関係については自衛するしかないし、自分で学び、実践するしかない、ということである。まして現代の住環境は劣悪なのだから・・・。
大気汚染、農薬、食品添加物、電磁波、そして放射能。体内に入ってきたそういう異物を排除するために必要以上に活性酸素がつくられている。だから、正常な細胞が痛めつけられないように、過剰な活性酸素を抑えるため、できるだけたくさんの抗酸化物質を摂り込まねばならない。
活性酸素の還元・無害化のために必要な抗酸化物質を得るには、以下のようなものを積極的に摂るべきであるが、学校給食でちゃんと出ていますか?
野菜類:ホウレンソウ、小松菜、ナス、ネギ、アスパラガス、トマト、アボカド、ニンジン、キャベツ、ピーマン、パセリ、シソ、カボチャ、ミツバ、サツマイモ
果物:レモン、ユズ、カキ、モモ、ブルーベリー
穀類・実・豆類:玄米、蕎麦、、納豆、小豆、空豆、黒豆、ごま
海藻:ひじき
魚:イワシ、サバ、カツオ、ウナギ、ハモ、アユ、サンマ、サケ、シシャモ、タラコ、牡蠣
肉類:卵黄、鶏肉、牛レバー
(前出『食のモノサシを変える生き方』より)。
※誤解しないように書いておくが私は極端な菜食主義を薦めているわけではない。少量であっても動物性たんぱく質は絶対に必要なのだ。必須栄養素のビタミンB12が植物性食品にはほとんど含まれないからである。だから世界の伝統的な食事を調べていくと、肉・魚・乳製品は少量ながら必ず摂られている。
追記:人気記事で読まれているようなので書き足しでおきます。それは放射能被爆によっても糖尿病が増える疑いがあるということです。ストロンチウム90はベーター崩壊後イットリウム90になるのですが、これが膵臓(すいぞう)に集中するのです。膵臓というのはインスリンを分泌する臓器ですから、ここに異常が出ると糖尿病・膵臓がんになります。香川県はともかくとして、全国的・世界的に糖尿病に患者が増えているのは、被爆の影響もあるのかもしれません。