2017九州豪雨!/その2


2017九州豪雨、連日テレビの映像や続々とアップされるYou Tube の映像などを見ている。この頃はドローンでの撮影が導入されているので、現地の様子がよく解る。

それにしても凄まじいまでの流木である。多くが根っこを付けていることから、土砂崩壊で滑り落ちたスギと思われる。そしてかなり太いサイズのものが混じっているのが特徴的なのではないだろうか。

【国土地理院】福岡県朝倉市 奈良ヶ谷川の被害箇所 https://youtu.be/GXfXW4EUNDA

拡大造林時に九州において大量に植えられた「挿し木苗」のスギは、根が貧弱で直根がないのである。そのスギが間伐されることでどんどん太く高く重く育っていく。だから滑ったときの破壊力が大きい。

強い間伐をして中に広葉樹を呼び込み、その中層木をしっかり育て、針広混交林にすればよいのだが、多くの林業地ではスギならスギばかりの単層林にして、芽生えてきた広葉樹は伐ってしまう。山を畑のような感覚で育てているのだ。

手入れの放棄されたスギ林は暗い線香林になって下層植生がほとんどなく、表土は流れ、地盤支持力や保水力も激減しているので言わずもがなだが、たとえ間伐されたとしても、現在の森林組合の多くは弱い間伐しかしない。スギだけがぎゅうぎゅう詰めになりながら、貧弱な下層植生の元に太っていくのである。

流された流木は橋に重なりあい、土石流を民家の方向へ運んでしまった。ため池に流れ込んで堤を決壊させてしまった例もあるようだ。

「また同じ所がやられた」憤りの声も 九州豪雨氾濫、5年前と類似 流倒木が川せき止め

「国策に従いスギの植林を進めたが…。林業の衰退とともに手入れが行き届かなくなったのも原因では」。渋谷博昭村長は疲れた表情で語った。(西日本新聞)

スギの植林が悪いわけではない。その後の施業がまちがっているのである。山を木の畑と考えて、畑にダイコンをつくるように、より太く、より長く、より多く採ることだけを考え、単一で過密な人工林が普通なんだと勘違いをはじめた。

そうではなくて、

肥料というものは森林の生物循環の中でまかなっていくものだ、ということは下層植生があり、中層植生がある森づくりをすることによって、肥料分をそこで自然循環させる、という山づくりにやはり持っていかなければいけない。で、そういう山というのは、天然の山、天然の針葉樹林、たとえば屋久杉、木曾のヒノキ、秋田スギ、北海道のエゾマツ・トドマツなどがそうですが、ああいう山をお手本にしてこれから目指していくべきじゃないかなと思うわけです。(鋸谷茂『間伐講議/2001.6.16』

2011年に大崩壊した紀伊半島もまだまだ危ない。四国や静岡辺りの山も同じ崩壊が起きる可能性が高い。雪折れや風害で自然の間伐が入っている山は広葉樹が回復しているので安心だが、そうでない太平洋側で単一のスギ・ヒノキの密林になっている所は危ない。間伐の質を高めねば、その危険はどんどん深刻になっていく。

鋸谷さんは言っている。

自然はどんな大きな災害をもたらそうと、それは絶対に正しいんです。やはりその中で人間というのは何をすべきかということを考えていかなければならない。自然から教えられる通りにやればいいのです。エゴに迷わされずにやっていただきたい、と思うわけです。(同)

今回の山林崩壊、さすがに一般の多くの方々もその真因に気づき始めたのではないだろうか。それだけが救いである。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、一刻も早い救助と復興を願っています。


追記:「西日本新聞」2017年07月17日の記事に「林業の悪循環、防災に影 人工林管理、行き届かず」というタイトルで挿し木苗スギの指摘が出ている。

 そこに植えられたのは、根を深く張らない針葉樹のスギやヒノキ。種子から成長する場合は深く密集した根を張るが、人工林は挿し木から育てるため、根は浅く、密度も低い。木を真っすぐに育てるにはある程度密集させるため、根は広がらない。

さすがの林野庁も動かざるを得なくなったか「流木災害の構造や減災対策を探るチームを初めてつくり、近く現地を調査する」そうである。

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/343719/


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