瀬戸内定置網漁取材(その2)


遠くに小豆島の島影を眺めながら、険しい岸壁の岬を岸に沿って回っていく。定置網は2つの切り立った岬の間の入り江に仕掛けられている。定置網は網を動かして魚を捕るのではなく、海中に仕掛けて自然に魚が入るようになっている。漁の合間に図を描いてカタチを教えてもらったのだが、その構造はなかなか複雑である。

まず岸から生け垣のように網を縦に垂らした1本の道筋が沖合に出ている(垣網)。魚は障害物に沿って泳ぐ習性があるのでこの垣網によって「運動場」と呼ばれる囲いの中に導かれる。

やがて漏斗のような導き口によって、天井にも網をつけた立方体の網の箱の中に魚は囲い込まれる。その立方体の網の箱からは三方に鯉のぼりのような円筒形の袋小路が飛び出ており、最終的にはそこに魚は追い込まれていき、巾着のように縛られたこの鯉のぼりの尻尾のとことから収穫するのである。

が、この収穫袋のひとつは途中から大きな箱になっており、中央を絞り込むことで大量の魚を獲ることができるように工夫されている。言葉だけでは解りにくいと思うのでラフスケッチを描いてみた(M君に確認済み)。

立方体の網の箱にいちど導くのは津田の漁師が発案して特許をとっていたらしいが、今は自由にできるらしい。M君はさらに改良を加え、この定置網を独力で設置したというから凄い。

まずは大型の箱網のところを回収する(船は図の矢印の位置にいる)。箱の真ん中にガイドのリングが付いていて、ロープが回っていて引っ張ると絞れるようになっている。

網を船の上にたぐり寄せながら、徐徐に網を水中の網を小さく絞っていくのである。

重量がかかるときはエンジンで回る糸巻きを使う。

私は撮影に回っていたのでN先生が奮闘。

網に付いている泥が海中に舞うのだけが見え、まだほとんど魚影は確認できない。

網のいちばん奥のブイが寄ってきたら、フックの付いた棒で網を持ち上げぎみに固定する。ロープをマストに固定。

反対側は棒を船の部品に付いている穴に突っ込んでいた。

魚が見えてきた。表層の小さな茶色の群れはアジの幼魚だそうだ。

クラゲがかなりいる。それは水槽に入れないほうがいいので、先にタモですくって外に捨ててしまう。

やはりアジが多いようだが、コノシロやハゲ(ウマヅラハギ)、小型のエイなども見える。

ゴミや藻、クラゲを捨てきった頃合いを見て本命の魚たちをすくいにかかる。

船底の下に海水と氷を入れた水槽があって(スギ板でふたがしてある)そこにどんどん入れていく。

やはりアジがすごい量である。

ハゲ(ウマヅラハギ)は隣の別水槽の生け簀に入れる。活かしておくために氷は入れない。

大きなヒラメも入っていた。こういう一匹売りのできるものは生け簀の方へ。

最初の氷まじりの水槽は魚だらけになって凄いことにw。

生け簀にはスミイカなども入れる。魚と氷のほうに入れると墨を吐かれてしまうのだとか。

きれいに網の中が片付いたら、網を戻して元の形にする。アンカーと滑車などが利用されて、案外戻すのは簡単なのだ(よくできている)。次に鯉のぼり形の追い込み網を上げにかかる。

 

巾着のところまで魚を追い込んだら、ひもをほどく前に大型の丸網を用意して、

海中でこの網の中に入れてから魚を放つ。

やはりロープをマストに掛けて固定するのである。まずは大量のクラゲを捨ててからの作業は同じ。

こちらもかなり入っている。

大きなマダイやスズキもいた。しかし種類の豊富さは驚くばかりだ。

M君の生け簀への魚の移動は非常に素早い。

あっという間にすくい上げて、もう一つの追い込み網を上げる。大漁に笑顔。しかし今日は少ない方だというのだ(驚・・・)。

帰りのもう一つの定置網を見に行ったのだが、ここは形がつぶれているというトラブルで回収せず。補修もいまは潮の流れが速くてムリだそうだ。今日は大潮で干満の差が激しい。すでに潮が引き始めている。瀬戸内海はふだんは静かな内海だが、潮が動くと川のように流れる場所がある。

港へ帰る。岬の灯台が見える、この上は台地状になっていてゴルフ場が運営されている。

港に到着してすぐには魚を移動しない。日が高いとき魚をいじると痛んでしまうからだという。M君の家で魚を食べさせてもらえることになった。M君は料理の腕前もたいしたものなのである。必要な魚だけ生け簀から取り出して移動する。魚は大きめのアジとスミイカ、それにハゲである。

「その3」へ続く。


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