またまた締め切りぎりぎりで連載をアップ。僕も大変だが、こんなスレスレの綱渡りに慣れない相方も胃が痛くなって大変らしい。鬼石のヤマト便の朝イチの便でデータCDを発送し、その足で図書館へ。予約していた建築家レーモンドの特集号の『上州風』をゲット。さっそく写真にある軽井沢の「夏の家」を見に行くことにする。藤岡から高速に乗ると軽井沢はちょいの間で着く。
「夏の家」は高崎の「群馬音楽センター」の設計者、レーモンドの軽井沢の別荘だが、現在は移築され、フランスの画家ペイネの美術館として活かされている。コルビュジエの設計の剽窃として物議をかもした木造建築だけに楽しみだったのだが、単なる山小屋風の建物でちょっとがっかり。
足場丸太のようなスギ材を多用した片屋根の組み合わせで、構造的には隣のイタルさんちの軽トラの車庫と同じようなものだ(なんて書いたらレーモンドのファンは激怒かな、スイマセン)。軒が小さくて、日本の気候じゃ長持ちしないだろうな。空間的にもあれがコルビュジエなのかな? よく解らない。
ところでペイネのペンの線はなかなか良かった。でもペイネは売れすぎてしまったのかな。アートとしての凄みやサムシングに欠けていて好きになれない。
同じく軽井沢にあるレーモンドの「聖ポール教会」はちょっと驚かされた。スギの足場(磨き)丸太がいたるところにふんだんに使われている。これはもう間伐材建築とでも呼びたいくらいだ。椅子にもテーブルにも、譜面台にも、スギが使われている。一般住宅に、もっとこんな丸太の使い方があってもいいと思うのだが※。しかし、昔の洋風木造建築とか、小学校の木造校舎なんかは、ずいぶん巧くやっていたと思う。
『上州風』にあるレーモンドの自邸の写真には、中央の内庭部分は屋根を外してあり(コピーの井上邸ではガラスが載せてある)、垂木を使ったフジ棚になっている。すなわち、庭先のフジの木を屋根に呼び込んで、その下で食事をとることを常としていたという。また、オリジナルの「夏の家」ではコンクリート土台を高く使って一部がテラス状に張り出しているし、屋根は柴屋根とでも言うのか、植物が乗っかっているのだ。自然が好きな人だったんだな。
当時のレーモンドの住宅の考え方・・・「裸の構造体、横長の大きな開口部、は世界のモダニズム建築が求めていたものであった」って『上州風』に建築家の三沢浩さんという人が書いている。レーモンドはその原理を日本の民家などから感じとったのだそうだ。しかし、民家をモダニズム建築に移行させて、いいことがあったのかな? それなら、民家建築そのままでいいのではないか。ここに、「設計家が前に出る」という近代の誤謬が見えるよね。昔は建築家はいなかった、大工さんはいたけど。
※追記:後で知ったがこの「聖ポール教会」は後に家具作家として大成するジョージ・ナカシマがレーモンドの事務所にいたときのものらしい。たぶん簡単に見えて丸太の繋ぎはとても難しい仕事なのだろうな。