単行本の装丁の依頼がきて、野菜の写真が必要になり、ちょうど畑にキャベツがあったので、撮影してそれを使うことに。MacのOSXの安定性が助かる。以前ならデータがPhotoshopとIllustratorを行き来する間に必ず1度はフリーズしたものだ。データを保存し忘れているうちにクラッシュ、泣き・・・ということが何度もあった。OSを変えてから、それが全くない。
Illustratorに張り込んだデータはPDFファイルに変換できる。これがまた非常に便利だ。以前はPhotoshopに焼き直してJPGに変えて送らねばならなかったが今はボタンひとつでできる。それをメールで送りラフ案を検討してもらう。
カバーの中にある表紙は1色なので、モノクロに変換して補正。プリンターで印刷したものにDICの特色で色指定する、というこの辺はまだアナログだ。完成したデータは圧縮してメールでも送れるのだが、なにしろいまだISDN環境なのでCDに焼いてヤマト便。
YKがインテルMacを導入したので、さらに分業で様々な仕事と量をこなせるようになるだろう。僕がPCを仕事に使い始めたのはちょうど2000年で、iMacのDVDが最初のハードウェアだった。いまはるかに高性能のMacが当時のiMacDVDの値段以下で買える。ハードディスクの容量はなんと当時の100倍(!)である。というわけで、山に居ても、都会のデザイン会社と全く同じレベルの仕事ができる。PCの発達のおかげである。
ところでキャベツだが、モノの本には肥料をたっぷり与えないと結球しないなどと書いてあるが、アトリエの畑はほとんど無肥料(草木灰と木質系の堆肥のみ使用)で大きく育っている(ただし時間がかかる)。これを千切りにしてさっと山水で洗い、クレソンを少々混ぜ、鳴門でオミヤゲに買ってきた「灰干しワカメ」を戻してみじん切りにし、上に載せ、ドレッシングと醤油と鰹節をかけて食べる。
この「灰干しワカメ」が旨い! YKによれば四国ではご進物の定番なのだそうだが、いままでこのワカメを知らなかったのは人生の損失だあああ、と悔しくなるほど旨い。僕がこれまでよく食べてきたのは太平洋側でとれる塩蔵のワカメだが、これは実は一度茹でてあるのだ。「灰干し」は茹でる過程がないので養分の損失が守られているのだろう。
150年の伝統があるこの製法、灰はシダ類や樹木を燃した草木灰を使っていたらしいが、ダイオキシン関連の法律で灰が使えなくなり、現在は代用として炭を使用している。というわけで、活性炭の黒い粉が乾燥ワカメの表面にいっぱい着いていて、ワカメを戻すとき水洗いすると汁が真っ黒になり、最初はぎょっとした。湯通しする方法に比べて手間がかかるため、今でも“炭干し”を続けるのは、わずか30軒程度、だそうだ。