沼田の桐下駄と桜


イベントで出会った桐下駄

2年前、県庁前広場で行なわれたイベント「ぐんまの山村・グリーンツーリズム体験フェア」で、沼田の桐下駄に出会った。毎年SHIZUKUの展示と紙芝居の依頼を受けて私たちもこのイベントに参加しているのだが、もうイベント時間が終わろうとしているとき、他のテントを物色していて目に止まったのだ。

実際に下駄を作っているおやじさんがテントにいたので話しかけた。アトリエに暮らし始めてからは下駄履きが好きで、野外作業以外の普段履きにはほとんど下駄で通している。当時履いていたのは廉価版の桐下駄で、海外で作られた塗り物であった。その下駄も2足目を履きつぶしかけていたところであった。

「ダメダメそんなの履いてちゃあ・・」と、オヤジさんは言った

本当の桐下駄がいいのはわかっているのだが、高くて普段履きにはもったいないと思っていたのである。ところがこの沼田の下駄は国産の本物の桐を使った下駄なのに安い。まず形がよく、うづくりで桐の表面を研ぎ出して光沢が出ている。鼻緒の色と材質がとてもよかった。吸い寄せられる気品があったのである。そして、いま履いている輸入ものの下駄の話をすると、おやじさんはキッと私をにらんで、口を開いた。

「旦那さん、ダメダメそんなの履いてちゃあ。安くしとくから、とにかく一度これを履いてみなさいよ」

歯が減ったらおじさんのところに持っていけば1000円で付け替えてくれるというのも気に入った。私は2足買うことにした。

軽く蒸れない桐下駄

これが履いてみると本当にすばらしいのである。まず軽い。輸入ものの桐下駄よりもずっと軽く、歩きやすい。そして無垢の木なので足裏がとても気持ちいい。私は汗かき性の足なので、長靴や革製のワークブーツなどを履くと足が蒸れて辟易することがあるのだが、そんな私の足には桐下駄、これ以上の履物はないのである。

旅に出るときは車に必ずこの下駄を積んでいく。旅先で温泉や銭湯に入ったあとにこの下駄をはく気持ちよさといったらない。「こんなすばらしいものをなぜ日本人はなくそうとしているのか!」と、目の前をビニールサンダルであるくオヤジに叫びたい衝動にかられるほどである。これを履いたらもう二度と輸入下駄には戻れないのであった。

歯のすげ替え

そして2年前に買った2つの下駄は、すっかり歯が減った。すり減ったけれども、鼻緒は丈夫で両方とも一度も切れない(輸入下駄はまだ履ける時期に切れる)。はやく持って行かねば・・・と思いつつ、ようやく今日持っていった。

沼田の鍛冶町にある「丸山下駄製造所」をカーナビで探してたどり着くと、見覚えのあるおやじさんと奥さんが歓待してくださった。座敷でお茶をいただきながら、最近の下駄作りにまつわる話題を興味深く拝聴した。丸山さんは現在70代だが、残念なことに、後継者はいないということであった。しかし、昨今はスローライフ・健康ブームで下駄の売れ行きがよく、仕事が忙しいという。

2足の下駄のうち1足は減り過ぎて歯のすげ替えげできない、ということで1つだけお願いした。そして町履きに良さそうなゴム底打ちの下駄を1足買った。

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帰りに丸山さんの小冊子『私と木』までいただいてしまった。

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公園の桜ちょうど見頃というので、行ってみた。駐車場からさっそく買った下駄を履いて。ここは池波正太郎の『真田太平記』の舞台のひとつ、沼田城の城跡なのだ。私たちは長野の上田も好きでよく遊びに行くのだが、真田つながりで、沼田もよいな。

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コメント

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