四万十式林道、朝日新聞掲載


四万十式作業道が新聞に出た。紙面は見ていないのだが1月4日の朝日新聞(関西版)にかなり大きな記事として(なんと朝刊1面トップ!)紹介されたようだ。

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「四万十式エコ林道、全国に拡大 材料現地調達で低コスト」

清流で知られる四万十川(高知)の地元で考案された「四万十式作業道」と呼ばれるエコ林道が全国に広がっている。材料をすべて現地調達するため、環境に優しく、設置コストが格段に安いのが利点だ。水源保全で森林整備を進めるサントリーが導入を始めたほか、林野庁も新年度から補助金を出す方針だ。

四万十式作業道は、高知県四万十町(旧大正町)の林業担当職員だった田辺由喜男さんらが1996年ごろに考案した。林業の衰退で手入れされない人工林が増える中で、低コストの作業道が必要だった。従来の作業道は、材木の搬出にも耐えられる強度にするため、道をコンクリートで固めたり砂利を敷いたりすることが多かった。

四万十式は、設置現場に生える植物の根や葉を含む表土と、表土の下にある土とを交互に積み重ねて強度を保つのが特徴だ。重機で踏み固めれば、表土にある植物の繊維質と土が絡み合って崩れにくくなる。路肩は木の根株も埋め込み強化する。道幅は軽トラックが通れる2~3メートル程度が一般的だ。

削った土を山の外に捨てないため、設置コストは1メートルあたり2千円程度。砂利や丸太で造る従来の作業道の5分の1、コンクリート舗装した林道と比べれば、50分の1程度ですむという。外部から一切、材料を持ち込まないため、生態系への影響も少なくできる。

滋賀県は08年度に取り入れ、県北東部の17カ所、約9キロの区間で四万十式など低コストの作業道を造った。このほか、福島、長野、奈良、熊本などの森林組合も09年度に設置した。

水源の保全を目的に森林整備を進めているサントリーは09年10月から群馬県の4キロ区間で設置した。今後、こうしたエコ作業道を9府県10カ所、計約3393ヘクタールの森林に広げていく。

林野庁は07年度からは四万十式など低コストで耐久性のある作業道の普及を目指し、技術者育成の研修や現地実習を開いている。新年度からは、森林整備予算を舗装された林道より、四万十式などのエコ作業道に重点的に振り向けていく。(長崎緑子)

■東大大学院の酒井秀夫教授(森林利用学)の話

日本の人工林は手入れが行き届かず荒れ放題になっており、簡易な作業道の普及が課題になっている。四万十式は、木材価格が低迷する中で、耐久性を確保しながら単価を抑えることができるのが利点だ。火山灰が多い関東など雨天で土がぬかるみやすい場所では、丸太を組んで補強することも必要だ。地域の実情に応じて工夫すればさらに普及していくだろう。

http://www.asahi.com/eco/OSK201001030105.html

ついに林野庁も新年度から四万十式に補助金を出す。山が動いた! 東大の酒井教授にもお墨付きをいただいた。

昨年、初版が売り切れ増刷が決まった拙著。

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こちらは出版直後の『高知新聞』2008.3/14による紹介。

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自著紹介はこちら

この記事、反響が大きいようで、全国のブロガーに続々記事が紹介されている。

新聞では「林道」とあるが、四万十式の正確な分類上は「作業道」である。幅員3m以下で切り土が低く垂直なので伐採幅はごく少ない。遠方から山を見るとどこに作業道が入っているかまったく解らないほどだ。大きな特徴は伐採した根株を盛土の補強に使うこと、表土を捨てないで盛り土に挿入し、側面の緑化を促すこと。

「伐採に恒久的な作業道など必要ない」と考えている人は現在の林業現場を知らない人である。一昨年出版された北大名誉教授、石城謙吉氏の 『森林と人間―ある都市近郊林の物語』 (岩波新書)のこちらを読んでいただきたい。


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