山村のコンクリート


午後、イタルさんがやってきた。

「オオウチさんとこの庭のザリ、貰えねえかい・・・」

ザリって何? と思ったが、よくよく聴いてみると、コンクリートを打ちたいので骨材の砂利(ジャリ→ザリ/群馬の訛り?)が必要、ということらしい。

工事現場はアトリエのコペン駐車場のある道(イタルさんも日常使っている)。その割れ目を直したいということらしかった。へこみは電柱の工事の人が作ってしまったらしいが、実は数ヶ月前から、穴の陥没がやや大きくなり、心配していたところだった。

で、その穴にコンクリ-トを打って塞ぎたいのだが、セメントは水で練っただけでは強度が弱い。その中に砂と小石(ジャリ)を混ぜるとコンクリートになるのである。

イタルさんの言う「庭のザリ」というのは、アトリエに隣接するイタルさんちの下屋の雨排水が、一部ウチの庭を伝って石垣から落ちる(染みる)ようになっているのだが、その溝をいっしょに掘ったこときジャリが多く出てきたのを、イタルさんは覚えていたのだった。

「今日は出かけるのかい?」

「手伝いますよ」

山村では突然仕事が始まるのだ。コンクリートの打ち方を覚えるいいチャンスである。

イタルさんはこの地で養蚕と農業で暮らしてきた人だが、出稼ぎで土木工事に出たときもある。だから、現場仕事はとても詳しい。山村の人たち(7~80代の老人たち)は、身の回りのことは木こりも土木工事も大工仕事もほとんどこなす。凄いことである。

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