クリス・コナー合掌


学生時代の友人の結婚式へ宮崎へ向かう旅の途上、奈良国立博物館の特別展「運慶快慶とその弟子たち」展を見た。私は35歳。ようやく掛け持ちのアルバイトから脱出し、ネーム入りで様々なイラストの仕事をこなし始めていた。

超安宿をみつけた。キッチュな壁紙、狭い共同風呂。そこはなんと門限があって夜10時にカギを閉めてしまうのである。ひとり奈良の町に繰り出すと、ジャズ・バーがあったのでウィスキーのオンザロックを頼み、クリス・コナーをリクエストする。

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八塩温泉、アニタ・オデイ


高崎個展の通路の壁を飾るオブジェのアイデアが生まれる。重厚な蔵の空間なので調和するものを置きたい。テーマは「古い町、山の水、なつかし物語」。僕にとって9回目の個展であり、群馬で始めてひらく個展である。もちろん、いつものように単なる売り画やクラフトだけを飾るつもりはない。

午後、相方は書の制作。僕は紙芝居制作。その後ライブの新曲を音合わせ。バラードのほうはOKだけどボサノバのほうがイメージ通りにいかなくて何度も練習。ギターの練習も大変である。左指が少々くたびれて鈍痛がおきてきた。

夕刻、鬼石へ降りて久しぶりに日帰り温泉へ。もう時間も遅いので、鬼石の八塩温泉へ。ここは古くから多野の名湯として知られる。なかでも「神水館」は名旅館で「秘湯を守る会」の会員宿でもあるが、僕らは「ヤシオカン」ヘ行ってみた。泉質は、ナトリウム・塩化物・炭酸水素塩泉だが、加水加温してあって塩素臭も若干ある。が、それもそのはず、入り口にある源泉のコックをひねり口の含んでみると強烈な塩辛さ。海水とほぼ同じである。

戦時中はこの源泉を使って塩を作っていたらしい。含まれた炭酸ガスを利用して作られた八塩煎餅が鬼石の町内でいまも作られている。多野地方にアオバト(海水を飲みに集まる奇習で知られる)が生息するのは、このような塩泉の存在も大きいのだろう。加水してあるとはいえ、さすがに効き目のある温泉だった。

押し入れの中からアニタ・オデイのCDを取り出して、行き帰りの車の中で相方に聴いてもらう。