竹林寺納骨堂


昼過ぎ、突然思い立って高知まで車を飛ばした。もともと私は直感的に動く人間なのだが、yuiさんを失って一人暮らしになってからは、やることがさらに加速度的になった(笑)。なぜ高知かというと、1つは西日本豪雨で大破した高知自動車道の崩れた山(山林の常態)を確認すること。もう1つは竹林寺納骨堂を見ることである。

竹林寺は四国遍路31番の札所で、車遍路をしていた4年前に訪れた。本尊の文殊菩薩は50年に1度開扉する秘仏で、四国霊場1200年記念でもある2014年がまさにその年であった。納骨堂は前年に竣工していたのだが、まだ存在を知らなかったのだ。

文殊菩薩がある本堂の右手にひっそりとした石畳の道が伸びている。歴代の住職の墓があり、その奥にRCと木造の混構造による納骨堂がある。堀部安嗣が日本建築学会賞(2016)を受賞した建物である。

前回の屋久島の帰りに堀部さんの初期作を見て、他の作品も見たくなった。堀部安嗣は住宅設計が多いので自由に見れる建物が少ない。

本体(納骨室)は耐火構造の必要があるので鉄筋コンクリート造、打ちっ放しの型枠目地とピーコンの穴をそのまま見せている。その上の屋根が木造なのだが、最も安くて入手しやすい105㎜角の杉材を使い、それを敷き並べて集成材的に使っている。

柱はコンクリートの床にピンで浮かせて接合している。内側は櫛引の仕上げ。

奥に水庭がある。残念ながら水が止められていた。

移植ゴテのような水口、黒石の水盤、漆喰の白壁。

庇のディテール。

それぞれの素材感が響き合って美しい。

外側。

ローコストという条件がなければ生まれなかったアイデアであり美しさでもあるだろう。堀部さんが好きだという庭と一体になったスケールの小さな寺、そしてライトやスカルパにつながるモダンな感覚、それが見事に融合した建築になっていると思う。

本坊・位牌堂の建て替え中、こちらも堀部さんの設計で進められている。

近くでは瀬戸内クルーズの「ガンツウ」という客船を設計しており、こちらは堀部建築を味わいながら船旅ができる。いつか10万部超えのベストセラーでも出せたらその印税で、是非とも乗船してみたいものだ(笑)。

高知自動車道は大豊から笹ケ峰トンネルまでの約8km区間が対面通行になっており、崩壊地の斜面がよく観察できた。やはりスギの人工林斜面であった。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください