取材である山に入った。拡大造林時に植えられたと思われるヒノキ人工林。下枝払いさえ行なわれていないので、地面から数十センチから枯れ枝がついている。
下刈りを抜けてから、一度も手入れをしていないのは、その植えられたグリッドのまま、きれいに格子状に木が立っていることでうかがわれた。
下層植生はほとんど無いが、雪折れのスポットから広葉樹が立ち上がっている場所がある、そして。
驚くのはクマ剥ぎの痕(あと)だ。
ツメで剥いで、甘い形成層を部分を舐めたもの思われる。古いものもたくさんあるが、写真はおそらく前日の爪痕である。
下草のない荒廃人工林は、大型動物たちの格好の通路になっている。これは過去にあり得ない森林形態なのだ。
クマたちはどんな思いでいるのだろうか?
人の欲望が山を変えてしまったことを思う。
そして、クマたちといま、ここにある自分をいとおしく思う。