Y先生の畑の石垣修理を終えたとき、イタルさんから、
「ウチの畑の石垣も頼むよ」
と言われていた。そう、あの昨年の台風9号でイタルさんちの石垣も壊れていたのである。それは80歳のイタルさんがここに暮らして一度も壊れたことのない石垣だった。それほど、今回の雨は凄まじかったのだ。
今回は石垣がやや高く、足場を組んで石を上げねばならない。幅もあるのでかなりの作業量がある。若い頃のイタルさんなら、一人でやってのけてしまう作業なのだが、大きな石はさすがに上げれないので、僕の助っ人を待っていたわけなのだ。
高くなればなるほど、大きな石は上げるのが困難になる。できるだけ下のほうで使いたいのである。だから、僕の助っ人がなければ作業が前に進まないのだ。なんとか一日スケジュールの都合をつけて手伝う。
崩壊して畑の下に転がり落ちた大石を運ぶのは、持ち上げるのではなく、地面を転がしながら石垣の基部まで上げていく。そしてそこから重量挙げのように持ち上げる。
この地道な作業の繰り返しで石を少しづつ上げていくのだ。それだけではなく、大石の裏に積む ゴズ(裏込め石)も、高くなるにつれ運ばねばならないし、土も運ばねばならない。崩れた石垣裏の空間は、上にいけばいくほど広がっている。これもけっこう大変。
今回は高い石垣の足場の組み方が勉強になった。太目の異形鉄筋をハンマーで石垣の空隙に打ち込み、それに足場板を掛けるのである。
ちなみに、石垣積みは共同体の「結(ゆい)」でもボランティアでもなく、賃金労働として依頼者から日当が支払われる。自然農の新潟取材から帰ったら、続きの手伝いをイタルさんに約束した。