四万十式作業道の田邊さんが林野庁林政記者クラブ「グリーン賞」を受賞された。
四万十式道づくりの田邊氏に今年度グリーン賞
林野庁林政記者クラブ(加盟8社)は、49回目となる今年度(平成20年度)グリーン賞(林政記者クラブ賞)を、低コストで耐久性の高い四万十式道づくり(「林政ニュース」第302~307号参照)の開発と普及で実績をあげている田邊由喜男氏(高知県四万十町林業政策監、51歳)に贈ることを決めた。
10月15日午後4時から、東京都千代田区の商工会館で表彰式を行う。グリーン賞は、林材業界の隠れた功績者を発掘することを目的に、毎年1名ないし1団体を全国公募をもとに選定している(日本林業調査会のニュース)。
授賞式に参列された編集者Gさんによれば、授賞式には林野庁長官や日本林業協会会長らお歴々が連なり、小人数ではあったが圧倒されたとのこと。田邊さんにも人が次々と挨拶にくるような状況で、Gさんも挨拶するのがやっとという状態だったとか。
来賓挨拶には、森林総研研修所の小原文吾所長が立ち「四万十式作業道は目からウロコが三つも・・・」というような話で熱弁をふるったそうだ。以下がその話の概略。
「目からウロコ、一つ目が、地山こそが安全として切り土切り土できた道づくりの発想を、きちんと転圧すれば盛り土だって大丈夫ということに気付かせてくれたこと。二つ目は、外から資材を持ちこんで造る道ではなく地にある資材を徹底的に活かす知恵を働かすこと。三つ目、一人のオペレーターで仕事が進められ、低コストを革新的に実現できていること。これぞ山に人が残り、暮らしていける林業再生の突破口である」
また、林業協会会長は、「四万十式は、ノーベル賞に匹敵する道づくりの技術」とまで言って、林野庁長官は「DVDを見てこれなら確かに道づくりが低コストでできそう、勇気がわいてくる」と話して、今後の普及に意欲を見せていたそうだ。
最後に田邊さんが挨拶に立ち、「道づくりのための道づくりでなく、森づくり、山づくりのための道づくりとしていくべく、これからもご自身、森の木の成長に負けないよう精進していきたい」というようなお話で結ばれた。まさに、『山を育てる道づくり』の気概溢れるスピーチであった、と。
受賞の経過として、本年は18件の推薦があった中で、ほぼ1回の投票で決まったそうで近来にない結果とのこと。それだけ、圧倒的な革新性があったということなのだ。「ノーベル賞級」というのもすごい賛辞だが、今の林業界ではまさに救世主的な技術であるだろう。
この四万十式作業道、私も本づくり(『図解 山を育てる道づくり』)で少しでもお手伝いできたのが嬉しいし、YKともども取材や編集制作の苦労が報われた気がして、この授賞式の様子を知って本当によかった。でも、問題はこれから。本当の普及が始まるといろいろ軋轢も出てくるだろう。産みの苦しみを乗り越えて、この道づくりを活かして本物の木造文化の復興、山村の復興につなげたいものだ。