元旦のワイン、鯛の南蛮仕立て


朝、起き出して眼鏡をかけようとすると、レンズの内側にまた小さなしずくの痕が付いている。涙を流してまばたきをしたときの、睫毛から散った飛沫の痕なのだ。もう100日になるというのに、こうして何度涙を流したことだろう。

いっしょに何度も歌をともにしたことがある友人たちが、yuiさんと飲んでください・・・と贈り物をくれた。歌手のやしきたかじんが愛したワインだという。元旦の朝からコルクを抜いて、囲炉裏暖炉に火をともして、思い出とともにそのワインを味わった。

0101-1

炎のゆらめきは群馬での囲炉裏生活を思い出させ、yuiさんの笑顔と姿が走馬灯のように明滅して、膝の上のバロンの漆黒の上にまたしても、涙のしずくを落とすのだった。

たくさんの人たちが手紙やメールで励ましの言葉を贈ってくれた。どうしようもない絶望の淵に落ち込んだとき、家族や友人というものはほんとうにありがたいものだなと思った。そしてわが家にやってきたバロンにも・・・。

それはいままで私の舌に経験のない極上のワインだった。香りもすばらしいが、爽やかな深い苦みとでもいうか、ゆるゆると舌から喉に入っていき、やわらかな酔いをもたらしながら、いくらでも、延々と飲めてしまう。

0101-2

つまみはいらないほどだが、昨夜つくっておいたバターピーナッツを相棒にする。炒った落花生をさらにバターで炒めてトリュフ塩をふって冷ましたものだ。そうして昼までにそのワインを、一人で飲み干してしまったのである。

日本酒の吟醸酒の世界もすばらしいものだが、このような飲み方はできない。高価なワインにはこんな世界があるのか・・・。フランスの乾いたかぐわしい大地を思い、日本の湿った森と海の国を思い、地球という星の偉大さを、そのワインは思い出させてくれた。

外に出て香西寺と芝山をまわってきた。よい天気で潮風が心地よい。由緒ある寺と漁港がある町はいいものである。戻ると腹が減ったので雑煮をつくる。今年は餅搗きができなかったが、Gomyo倶楽部の仲間が搗きたてを届けてくれた。あんもちはyuiさんにお供えし、私は丸餅の雑煮だ。

0101-3

夜は日本酒に切り替えて、鯛の頭の南蛮仕立てを作る。作り方はなかなか複雑なのだが、これは鯛の頭を最高に美味しく食べれる調理法の一つだろう。

0101-4

実はこれ、グルメ漫画『美味しんぼ』から傑作料理を抜粋した『美味しんぼの料理本』の巻頭を飾る料理なのだが、作り方は・・・

1)塩をたっぷりふって20分おき、熱湯をかけてウロコやぬめり、血合いなどを丁寧に取る。

2)水気をふいて両面に黒コショウと小麦粉を軽くふり、ライパンに油をひいてネギの青い所を敷きつめ、その上に鯛を置き、さらにさらにネギを被せ、フタをして中火で蒸し焼きにする。

3)8分ほど火が通ったら、いちど鯛をひきあげ、ネギは捨て、フライパンを洗ってもう一度油をひき、鯛の両面をこんがり焼く。

4)ネギの白い所を筒切りにしてオーブントースターで焼いておく。

5)鰹節出汁をベースに薄口醤油と酒で淡い味のスープを作っておく。

6)こんがり焼けた鯛を皿に盛り、焼きネギを散らしてスープをかけ、粉山椒をふって食べる。

コショウと油で鯛の臭みを消しながら、ネギの青い部分と白い部分をうまく使い分け風味を活かしている。また、砂糖や濃い口醤油を使わず、鰹出汁を贅沢に使うところもポイントである。

というわけで、目玉もゼラチン質のところもすべてむしゃぶりつくし、スープも飲み干し、骨だけが残ったのでした(ちなみにこの鯛の頭は198円だった)。

では、今年もよろしくお願いいたします。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください