ウロボロスの神話


昨日、朝のNHKニュースで「長野県の農業被害8億円」とやっていた。今年の大雪、林業の被害もあったのだろうけど、報道されるのを聞いたことがない。一昨年の岡山や四国での台風による倒木、崖崩れ被害もほとんど報道されていないのではないか。

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日本海側では今年はかなり人工林の雪害があったことだろう。また、日本海側では数年前からマツ枯れならぬ「ナラ枯れ」現象がおきている。キクイムシが原因らしいが、これも遷移の過程なのだろう。しかし、人が手を入れなくなった山の変化は、日本の場合はものすごく早い。

この現象は、学者たちには予測できないようだ。なにしろ有史以来これだけ森と急激に関わらなくなったのは、わずか4~50年前からのことだ。このような現象は過去に起きたことがないのであって、加えてチェーンソーやトラックで奥山の木がばんばん伐られてしまったという現象も加わって、さらに戦後の拡大造林による1千万へクタールという未曾有の人工林化という現象も加わって、日本の山はこのわずか数十年に、劇的に大きく大きく変わってしまった。

この変化から生れ出る日本の自然の総体的動きを、西洋経由の林学・分析科学の範疇でとらえるのはどだい無理というものである。林業の試験研究機関もあるにはあるが、木と森の性質上、時間的に常に後手後手にまわってしまう。だから林業の現場で役立つ研究がほとんどない。そして世間の人は森にはほとんど関心がない。実生活と乖離した場所だからそうなるのは当たり前といえるが、しかし工業だって水を大量に使うのだから、森の状態に無関心でいていいはずがないのだが。

悪いことにコンクリートを使う土木技術を日本人は急激に取り入れてしまった。そして、この土木公共事業に依存する人が増え、「仕事を待つ」状態になってしまった。たとえば産業のない山村では、現金収入を得るには役場か学校、農協や森林組合の他には土建業しかない。いや、もっとも安定しているのが土建業と言えるかもしれない。そして山林の土砂崩壊は仕事待ちの土建業にとって、これほど美味しい仕事はないのであって、いわば山の崩壊はあるていど歓迎すべきことなのである。

しかし、これは国家の根幹である「土地」を食いつぶすことで、自分の尻尾を食べる蛇のようなものだ。日本の自然はうまく使って切り回していけば生産力は非常に高い。たとえば女性・子どもでも簡単に採取できる沿岸や干潟の貝類は、昔は日本の浜や磯や河口どこでも大量に穫れた。内蔵まで食べられる貝類は完全食に近い栄養豊富なタンパク源だ。サケやマスやアユは海と行き来することで美味なる栄養魚となり、捕獲しやすい河川に上ってきてくれる天与の魚と言えるが、今やダムに寸断されて自然の回遊がみられない。かくして、土木工事で得た現金で、外国産の魚を食べているという悲しい現実が日本じゅうに蔓延している。

この問題を突く政治家は今のところ一人も出てこない。政治家が出るためには一般の人々にこの現実を知らしめ喚起させることが重要だ。と言いつつ、僕らも安いオーストラリア牛スジ肉なんぞをコトコト煮て、白インゲンとジャガイモとネギで鍋にして食べたりしている。

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本来なら、ここにはイノシシやシカや野鳥などが入ることになるのだろうが・・・。まあ、これはこれでウマイ。赤トウガラシ、月桂樹、シナモンスティック、ニンニク、ショウガで香り付け。塩コショウの薄味で、食べるときに味噌をとき入れる。翌日はカレールウを入れてご飯にかけて食べる。それが余れば水増しして鰹節のダシを追加し、カレースープにして食べる。

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畑でふんだんに穫れるジャガイモ(縁の下に保管してある)と白インゲン(乾燥豆で保管)ネギ(畑に山ほど作っている)は何とでも調和し、こんなとき便利だ。


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